大河ドラマ・勝海舟
今回の大河ドラマは「勝海舟」です。
「勝海舟」は大河ドラマ12作目で、1974年(昭和49年)1月6日~12月29日にNHKで放映されました。原作は子母澤寛『勝海舟』です。脚本・倉本聰、中沢昭二、音楽・冨田勲。視聴率は初回30.5%、最高30.9%、期間平均24.2%を記録しています。
大河ドラマ「勝海舟」は主演の渡哲也さんが病気で降板し、松方弘樹さんに交代しました。渡さんの実直さが前面に出た勝海舟も捨てがたいものがあります。その後、ヤクザ映画や悪人のイメージがまだ無かった松方さんが見事に引き継ぎ、軽妙で遊び心のある勝海舟を好演しています。
また、脚本の倉本聰さんが製作側と衝突して東京を離れ北海道へ移住しました。脚本家も中沢昭二さんに交代しています。皮肉なもので、これがなければ倉本さんは「北の国から」を書いていなかったかもしれません。
こうした騒動があったものの、「勝海舟」は大河ドラマのなかでも非常に評価が高く、視聴率も幕末もののなかでは好調だった作品です。幕臣でありながら立場を超えて自由に生きた勝海舟の生き方を、極めて劇的なタッチで描いたことが名作大河を生み出しました。
大河ドラマ「勝海舟」の後半は、岡田以蔵(萩原健一)と坂本竜馬(藤岡弘)がクローズアップされていきました。身分がきわめて低く、粗暴で無学だった岡田以蔵は暗殺者として利用され、尊皇攘夷派の失速とともに屈辱的な扱いで斬首されます。
大河ドラマ・勝海舟 1974年(昭和49年)
大河ドラマ版「勝海舟」で岡田以蔵は無学ゆえに純粋な性格で、非業の死を遂げる悲劇的な志士として描かれました。この非常に難しい役どころを、萩原健一さんは極めて危ういバランスを保つ好演で表現し、人気を博しました。
また、勝海舟を暗殺しようとした坂本竜馬が勝に弟子入りするくだりや、お龍(川口晶→現在は国重晶)とのロマンス(キスシーンや新婚旅行での入浴シーン)、寺田屋事件についても詳しく描かれました。
この大河ドラマ「勝海舟」は、坂本竜馬の暗殺に関して薩摩藩黒幕説を採用しています。藤岡弘さん演じる竜馬が血だらけになり、相手の肩を捕まえて着物を引きちぎり、ピストルを1発撃って息絶えるシーンは、大河ドラマの名シーンのひとつといえます。
一方、冨田勲さん作曲のテーマ曲も、時代の荒波に立ち向かう勝海舟と、大海に乗り出す咸臨丸の姿を想起させるかのようなダイナミックな名曲といえます。冨田さんはNHKとの相性が非常に良いようで、「きょうの料理」「新日本紀行」をはじめ、大河ドラマは第1作「花の生涯」以来、何度も音楽を担当しています。
松方弘樹さんの江戸っ子気質を体現した勝海舟に加え、萩原健一さんと藤岡弘さんの岡田以蔵、坂本竜馬は大河ドラマの歴史に残る屈指の名演であり、「勝海舟」は大胆で見ごたえに満ちた傑作大河ドラマとなりました。
この大河ドラマ「勝海舟」の映像は、第38回「竜馬遭難」、第39回「慟哭」、第44回「竜馬死す」、総集編(前・後編とも)が現存しNHKアーカイブスでの閲覧が可能です。しかし残念ながら、いずれもDVDは販売されておらず、市販化によって「伝説的名作」が広く一般に知れ渡ることが期待されます。